精神分析の教訓

ある言葉に敏感に反応して、不自然なくらい突発的に激怒するようなら、その言葉(刺激語)は、彼の触れたくないコンプレックスに関係している証拠である。正面からまともに対峙したくないものを直視しなければならない状況になったとき、否定のエネルギーが強く働くので、本人も説明できない強烈な衝動に駆られる。すなわち激しく動揺する。その結果、非常な激怒となって露呈することはよくある。コンプレックスとは、劣等感のことではなく抑圧されている感情の複合体である。どうしても認めたくない感情は意識によって否定され抑圧されるが、消滅するのではなく心の底にいったん移行され保存される。その痕跡が、なんらかのキッカケで触発されると爆発的なエネルギーとなって意識上に現れる。突然に怒りだす心理にはこのような構造がある。逆からみると、不自然な怒りの感情は、隠されていた深層心理の暴露に他ならない。つまり、パンドラの箱が開かれる。だから気をつけよう。告白が意に反してなされてしまう。秘密が他人に明らかに知られてしまうのだ。もっと残酷になると、故意に怒らせ本心を聞きだす悪者もいるから注意が必要だ。対策としては、自分のコンプレックスを知り親和性を保つこと。率直に言うならば、自分の暗部(嫌いな部分)を否定せずに、正面から向きあう勇気をもつことである。ただし、認めたくないから抑圧されるので、認めるためには最高度の苦痛が伴うのは仕方がない。自分の心を掘り下げないで、自分の外側のみに関心があるという状態は一見すると健全に見えるが、あるとき、きっと事件に遭遇するであろう。納得できないものであり、言い知れぬわだかまりであり、心の棘であり、対象不在の不満であり、方向性の迷いであり、自分の処理に困惑することであり、なによりも欲求不満に辟易する結果となるだろう。否定されたものは抑圧されつつも、無意識に緊急避難する。抑圧されたエネルギーの大きさに比例して症状は形成される。症状もまた抑圧された心的エネルギーの一時的な避難場所である。症状は必ずしも病気となるわけではない。歪んだ性格や奇妙な癖などに変形される。人間の心はバランスを保つために、信じられない努力してをしていることに気付かずにはいられない。痛ましい防御反応!

渋谷昌孝(masataka shibuya)

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