ベストセラーと名著の違い
優れた作品は、じわじわとその卓越性が知られる。初めて対面したときは、嘔吐すら起こしかねない。だが、いったん理解されると価値の持続も長い。何が言いたいか?ベストセラーについて、大抵の場合それはすぐに理解される。ここに初めの躓きのようなものがないことが、歴史に刻まれた名著と決定的に違う。名著となる可能性のあるものは、初めに必ず躓く。それは当然である。歴史に潜む既成概念から超越しているので、世に現れた瞬間には、その価値を判断する基準がない。返ってその本が、新しい価値判断の代表となるものであるとするならば、轟々たる批判を浴びるのは、あたりまえすぎる運命である。卓越した価値の判断は、蝸牛のスピードでなされる。決してベストセラーのようにすぐに理解されることはない。こう言ったとしても、おそらく殆どの人達は信じないことは承知している。なぜなら、これまでも同じことが数えきれないほどあったからである。歴史は繰り返すが、いいことも悪いことも繰り返すのである。歴史からのメッセージを定期的に無視するのも、繰り返す。人間の本性は不変であるから。
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