「悪」の不思議

「悪」という言葉そのものは「悪」ではない。
「悪」という言葉が選択され、使用されるときに初めて「悪」が「悪」の意味を表象する。辞書にある「悪」は、つまり使用される前の「悪」という文字になんら悪意はない。語が選択される瞬間に血肉化されるのであって、未使用のまま待機している語は冷たい記号に過ぎず、生きた語というよりは死んだ語といえる。記号は使われるときに限って本質的に記号になることができる。

渋谷昌孝(masataka shibuya)

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